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19話 フィオの可愛さに油断したレナの第一印象

작가: みみっく
last update 최신 업데이트: 2026-01-04 06:00:19

「ごめんね。今キャンプ中で、しばらくここに滞在するんだけど大丈夫?」

 俺がそう尋ねると、レナは気に留める様子もなく、修行の日々を送る者特有の割り切りを持って首を横に振った。

「自分は、どこでも寝れますので大丈夫っす。依頼もないので問題ないっす」

 彼女の言葉には、僅かながら暇を持て余しているような退屈も滲んでいた。その時、小さな影が視界の端に映った。フィオだ。彼女はこちらに気付くと、弾かれたように駆け寄ってきて、力いっぱい俺に抱き着いてきた。その小さな体重と柔らかな温もりに、俺は思わず頬を緩める。

「あ、この子をよろしくね」

 俺はフィオの柔らかな頭を優しく撫でながら、レナに向かって彼女を紹介した。

「え!? この可愛い女の子をっすかぁ……? 私が教えられるのは剣術っすけど?」

 レナの目は、目の前の幼い少女に驚きと戸惑いを湛えていた。彼女の剣術にかける真摯さを思えば、遊び半分で教えることはできないという迷いが、声の調子から伝わってくる。

「なんか剣の筋が良いって言われてさ」

 俺がそう伝えると、レナは目を見開いた。その一言が、彼女の心の奥にある剣士の血を揺り動かしたようだった。彼女の瞳の奥に、探究心と期待の光が宿る。

「そうなんっすか? じゃあ……少し見てみるっすか……」

 レナが腰に佩いていた刀を抜き放つ。金属が鞘から擦れる微かな音が、周囲の空気を張り詰めた。その瞬間、彼女の目つきは一変した。先ほどの気楽な雰囲気は消え失せ、研ぎ澄まされた刃のような、鋭い光を宿す。

「ちょっと私に、本気で打ち込んできてくださいっす」

 真剣な眼差しを受け、フィオは迷いなく頷いた。

「うん」

 フィオも自分の剣を抜く。細い腕には不釣り合いなその剣が抜き放たれた刹那、周囲の空間が歪んだかのように感じられた。フィオの小さな体から、形容しがたい威圧のオーラが溢れ出す。それは、太古の力、ドラゴンの威圧そのものだった。まるで目に見えない炎のように揺らめき、辺りの草木さえも押し潰しそうなほどの重圧が、レナの肌を突き刺した。

 フィオがレナと向かい合い、ごく自然な、しかし完璧な構えを取る。その圧倒的な力の前に、レナは顔色を失い、恐怖に怯えた表情で小刻みに震えだした。肌で感じる威圧感に、彼女の剣士としての本能が警鐘を鳴らし続ける。

「ちょっと待って!! 無理っす。なんなんすか!?」

 レナは悲鳴のような声を上げ、手にしていた刀を落とし、その場に崩れるように座り込んだ。彼女の瞳には、目の前の可愛らしい少女ではなく、すべてを焼き尽くす巨大な竜の影が映っているように見えた。

「フィオその剣を収めてくれるかな。剣はボクが預かるよ。それで取り敢えず、この剣を使ってみて」

 俺は慌ててそう言いながら、フィオが持つ恐ろしいほどの威圧感を放つ剣に手を伸ばした。あのままではレナが本気で萎縮し、訓練どころではなくなってしまう。フィオは素直に頷いた。

「うん。わかったぁ」

 俺が代わりに手渡したのは、ごくありふれた、普通の鍛えられた鋼の剣だった。レナは安堵の息をつき、恐怖から解放された体で再び立ち上がった。仕切り直しの合図と共に、二人は改めて向かい合う。

 フィオは、先ほどとは打って変わって、ただの剣士としてレナに何度も打ち込んでいった。その動きは、細い体のどこにそんな力が潜んでいるのかと思わせるほど鋭く、天性の才能を感じさせるものだったが、すべての攻撃は、レナの的確で冷静な剣捌きによって、冷静に弾き飛ばされていく。レナは汗を滲ませながらも、フィオの攻撃をすべて捌ききった。

 やがて、レナは満足そうに剣を下げ、心から納得したという笑みを浮かべた。

「もう分かったっす。うん、筋が良いっすね」

 これで一安心だ。明日からフィオの面倒を見てくれる人ができ、専門的な訓練も受けられる。彼女の秘めた才能が、これで正しく伸ばされていくだろうということに、俺は心の中で安堵した。

「明日から本格的にお願いね。今日は、ゆっくりしてね」

 俺がねぎらいの言葉をかけると、レナは剣を鞘に納めながら、真剣な眼差しで俺を見つめた。彼女の顔には、まだ先ほどの、説明のつかない恐怖の残滓が貼り付いている。

「……さっきの剣は、なんなんすか? あれは、ちょうヤバそうな感じだったんですけど……」

 その問いには、一介の剣士として、あの尋常ではない力に対する強い警戒と、それを知りたいという好奇心がにじんでいた。

「遺跡から出てきた、秘宝って感じかな?」

 俺はそう言って、努めて軽薄に笑ってみせた。あの剣の正体を正直に話すのは避けたかったため、曖昧な言葉で適当に誤魔化したのだ。レナは不審そうな表情を浮かべたが、それ以上は追及してこなかった。

「……そうっすか。聞いちゃ不味い感じなら聞かないっす」

 レナはそう答えたが、当然ながら納得はしていない様子だった。しかし、ティナと同じく空気が読めるらしく、それ以上は深入りしてこなかったことに俺は助けられた思いだった。俺は預かっていた、威圧感の塊のような剣をフィオに返した。

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